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「仕事の属人化」を生む6つの行動とは。デザインファームDONGURIに学ぶ、組織作りに『デザイン思考』を活かす方法(前編)

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はじめまして。株式会社DONGURI代表のミナベトモミと申します。弊社は「デザイン思考」をベースに、商品開発や事業開発を行うコンサルティングファームです。

デザイン思考とは、端的に言えば、デザイナーの思考方法のこと。その思考法は汎用性が高いため、実際のプロダクト制作だけではなく、「組織設計」へのコンサルティングにも活用することができます。

今回はこのデザイン思考の知見を活かし、組織作りに携わるマネージャーや人事の悩みである、「仕事の属人化問題」を解決する方法について解説していきましょう。

<執筆>
株式会社DONGURI 代表ミナベトモミ
人の行動や導線を改善する「デザイン思考」を用いて、事業/商品開発を行い、多くのヒット商品を生み出している、デザインコンサルティングファームDONGURIの代表コンサルタント。(お問い合わせはこちら

デザイン思考とは、「人の導線を改善する」思考方法


デザイン思考の発祥は100年前。「生活導線」を、より良くしようと考え生まれたのが、「デザイン思考」という概念です。この新しい発想で当時多くのインテリアがデザインされ、「食事」「風呂」「睡眠」「掃除」「洗濯」など、人々の生活導線は大きく改善されました。

その後「デザイン思考」は人間工学とも絡んだ上で、「人間同士のコミュニケーションを改善する方法」として進化を遂げます。近年浸透したインタラクションを重視した「UXデザイン」における「導線改善」の手法も、「デザイン思考」のひとつです。

デザイン思考のスペシャリストとは、「行動を観察することによって心理や導線を分析すること」と、「良い行動に導く導線を作ること」の専門家と言えます。

今回は、このデザイン思考をもとにビジネスにおける「組織設計」について考えていきます。まずは会社組織における「人間心理」の面で、課題になりがちなポイントに焦点を当てて分析していきます。

仕事の属人化は「暗黙知の共有」がされないため起こる


組織作りに携わるマネージャーや人事の悩みとして、「仕事の属人性」という課題があります。仕事の属人性とは、チームの成果が特定の個人である優秀層のパフォーマンスによって決まってしまう状態。ないしは、特定のスペシャリストはいるが技術が継承されておらず、チーム内に暗黙知が共有されていない状態のことを指します。

属人性が生まれる要因としては、「暗黙知を共有する機会がない」ことにつきます。暗黙知を持っているメンバーが主体となり、社内で勉強会などを継続的に行なえればよいのですが、往々にして暗黙知を持っているメンバーほど忙しく、そのような時間の使い方をすることはできません。

そうした中で暗黙知を共有するためには、日々の仕事のコミュニケーションや、人間関係の中でのシェア、業務を一緒に行う中でのOJTによる伝達といった「コミュニケーションの質」を高めることが重要です。

人は感情をベースに動くから、自然状態なら暗黙知は共有されない


もしもコミュニケーションの質の向上に取り組まず、個人の裁量だけに任せて放置していると、チーム内コミュニケーションは悪化し、暗黙知の共有が適正に行われません。なぜなら、チームメンバー個人は、基本的に「感情」をベースにコミュニケーションを行うからです。

そうした感情ベースの人間の行動は、「暗黙知の共有」の行動とは相容れないため、自然に実施されることは決してありません。気がついた時にはチームで成果がまったく出せず、業務も特定のメンバーのパフォーマンスのみに依存し、属人性のみで仕事が行われる深刻な状況となってしまいます。

人が集まれば生まれる課題はいつだって同じ。感情が組織内で優先されることで属人化を加速するのは、個人が取ってしまう「行動パターン」と、その源泉である「心理と感情(個人欲求の実現)」にヒントがあります。

「仕事の属人化」を固定化する、6つの組織内行動と解決方法


では、導線設計がうまくされていないチームに起きがちな、「仕事の属人化」を固定化する6つの行動パターンを紹介していきましょう。

1. プロトタイプの導入に消極的


うまくいっている組織では、「課題を解決するための方法」をチームで前向きに考え、それを実現する施策のプロトタイプをいち早く導入しています。優秀層は往々にして組織内で課題解決をする力のあるメンバーであり、プロトタイプの導入に対して積極的です。チーム全体で課題解決のプロトタイプの導入を前向きにとらえることで、日々の業務においてOJTは建設的になされ、暗黙知が共有されていきます。

ただしこうした組織と対立するのが「個人の欲求」。新しいことに取り組むのはストレスが発生するため、誰もが前向きに行動できるわけではありません。なぜなら新しい取り組みは今の環境を変えてしまう不安なことだからです。今の自分の場所を守るために、「できない理由」「やるべきではない理由」を探すのは人間として当然の心理といえるでしょう。

この問題を解決するためには、プロトタイプの導入を行い、暗黙知が共有されるメリットについてマネージャーや人事が何度も説明を行い、体感させていくことにより、納得度を高めることが大切です。反対するメンバーは、取り組む内容に問題があるというより、コミュニケーション上の「説明」に納得ができない、ないしは理解が出来ていないことが多いからです。話を聞いて、共感するだけで、ある程度の課題は解決できるはずです。

2. 「批判屋」が多く、批判を恐れて発言しづらい


「批判屋」とは、誰かが新しい取り組みをしようとした際に、それに対して否定的な意見を発信するが、自分は解決のための行動をしない人のことです。批判屋が増えると、新しい取り組みを行う人や、組織を支えている人材のモチベーションが大きく下がるため、結果的に改善行動はもちろん、周囲へのフォローや暗黙知の共有もされなくなります。

ある調査会社がテレビコメンテーターの信頼度を測る調査をした結果、「肯定的な批評」をするよりも、「否定的な批評」をしているコメンテーターの方が、「知的で信頼度がある」と判断される傾向があります。人間心理として、どうしても「否定意見」のほうに耳を傾けやすく、かつ周囲からの評価を得やすいので、放置すればチームは否定的な批判屋であふれてしまいます。

こうなると、新しい取り組みやチャレンジの声をあげづらく、吊るし上げを恐れて誰も手を上げない環境となります。そのため、組織の中で活躍している優秀層は口をつぐんで行動も控えるようになり、他のメンバーをフォローすることや、周りに働きかけて成長を促すこともなくなります。

こうした批判屋に屈しないために必要なことは、失敗を許容することです。そのためには、マネージャーや人事がメンバーを否定的な意見から守る姿勢を示すことが重要です。

3. セクショナリズムが蔓延している


組織内の交渉において最大の武器となるのは、各分野の職能です。自分の職種の知見を相手に渡してしまうと交渉材料や優位性がなくなるため、無意識的に相手と知識共有をせず、「あいつはわかっていない」という意見を言い合うセクショナリズム化した状態になってしまいます。これでは暗黙知の共有は難しいでしょう。

セクショナリズムを打破し、チームで共通のゴールを実現するためには、「職能を活かして、チームのために何ができるのか」を考える共通意識を持つことが大切です。そうした意識があふれると、「自分の優位性」よりも「チームの成長」のほうが優先されるため、自然と相手に知識が共有される流れが生まれます。その流れをつくることが、暗黙知を共有し、優秀層を増やすためには必要不可欠なのです。

4. 社内政治に熱中し、社員同士の信頼関係がない


仕事の目的や進め方について適切な導線が敷かれていないと、「プロジェクトの成果」を生み出すことよりも「人間関係の構築」自体が優先されがちです。人間関係の構築において最も安易な方法は、「批判や失敗の予見」による「共感」です。

こうした「批判による共感」は、「社内派閥」を生みます。社内派閥はそれぞれの派閥の利益を重視するため、「社内政治」の元凶となります。そして、社内派閥同士で、仕事に関係がない個人のパーソナリティに対する攻撃や、事実とは異なる拡大解釈された既成事実が出回るようになります。

ここまで進むと社員同士の信頼関係は皆無となり、協力し合うことはもちろん、暗黙知の共有はされません。こうした意味で社内派閥や社内政治は属人性をなくす際に、最も障壁になる事象です。

社内政治をなくすには、「プロジェクトをうまく進める方法を合同で考える」「プロジェクトの成功を共に喜ぶ」といった前向きな「共感」をチーム全体に増やしていく必要があります。他人への批判は誰しもが後ろめたい気持ちを持っているため、前向きなニュースがあふれていれば、社内政治は自然と消えていくはずです。

5. 自分のプロセスを守ることに固執する


プロジェクトの要求が変われば、プロセスも変える必要がありますが、逆に成果をなかなか出せていない層は、どのような要求をされても自分の中で固定化したプロセスを変えることができません。また成果を出せなかった場合には、自分のプロセスに問題があったと考えるのではなく、顧客などの外部環境のせいにしがちです。

自分の中にある資産だけで仕事をしてしまい、楽をしてしまうことは、人間心理的に自然とも言えますが、それを続ける人は成長できません。

組織のガイドラインがない中では、いつの間にかそうした「成果を出すことが難しいプロセス」が各個人の中で複数固定化してしまい、優秀層が発見した「成果を出せるプロセス」が無視されがちです。

これを打破するためには、プロセス自体を目的にするのではなく、あくまで「成果を出すためのプロセス」であるという価値観を共有する必要があります。

6. 優秀な人ほど、暗黙知を共有しないまま辞めてしまう


属人性によって、組織を支える力のある優秀な人材ほど、今まで述べたような状況を嫌います。優秀な人材であるほど、「人間関係や社内政治に労力をさきたくない」「課題解決を最短で素早くやりたい」「主体性があってモチベーションが高い同僚と働きたい」といった、仕事のやりがいや、仕事で生み出せる価値を職場に求めます。

そのため、個人感情や欲求が重要視され、新しいことに対して後ろ向きな職場は、優秀な人材の属人性によって業務が成り立っているにもかかわらず、その優秀な人材から辞めてしまい、さらに属人性が高まってしまうという、負のスパイラルに陥る現象が多々発生します。

優秀な人材が長い期間在籍し、さらには周りに対して知識共有し、属人性をなくしていくような組織にするには、デザイン思考を用いて適切な組織デザインにすることが大切です。

行動を生み出す心理を分析し、行動改善する仕組みをつくるのが「デザイン思考」


なぜ仕事の属人化は進むのか。組織によって差はあれど、私が組織デザインをコンサルティングする際に発見した課題は、得てして上記のようなものでした。マネージャーや人事はこうした問題に苦しんでおり、コンサルティングをご依頼いただいた際は、社内のネゴシエイトがプロジェクトでセットになることもよくあります。

デザイン思考においては、まずなぜ問題が起きているのか。問題を引き起こしている行動は何か。行動を起こしている背景にある心理は何か。といったことを分析することから始めます。そしてさらには、その心理に訴求して行動を変えるには、どのような仕組みや導線を作ればよいのか考えていく必要があります。

仕事の属人化を解決するには、「日々のコミュニケーションの質」をよくするしか方法はありません。まずは、これら6つの行動パターンが自社に当てはまっているのであれば、是正することで改善へと向かうことでしょう。

そして、これによって属人化の改善が見えたら、次に取り組むべきことは、「暗黙知を見える化」してよりスムーズに共有がされるように仕組みを作ることです。

後編では、暗黙知の共有がされやすくするために、実際に私が導入した仕組みと、デザイン思考を用いた仕組み検討の背景について解説していきます。

▼後編はこちら
クリエイティブ会社で暗黙知を共有する方法。デザインファームDONGURIの『デザイン思考』実践事例(後編)

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