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【寄稿】そろそろ「人集め」ではなく「口説き」にパワーをかけましょう。

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ごあいさつ

株式会社人材研究所代表の曽和と申します。

株式会社人材研究所代表 曽和利光

寄稿記事一覧

エントリー数を増やすこと自体に意味はない

エントリー数等の採用活動における初期プロセスの指標が目標数に到達していないと、どうしても「まずはそこから」と頑張ってしまうものです。しかしながら、言うまでもありませんが、採用活動は入社してもらえる優秀な学生を確保するためにやっているものです。極論すれば、採用数を満たせるのであれば、エントリー数等の指標は単なる参考指標に過ぎず、本当はどうでもよいことです。
ところが、多くの採用担当者は、エントリー数を上げることばかりに注力してしまっているのが現状です。既に持って見つけることができた優秀な学生に対して、あまり時間を使いません。しかし、それでは本末転倒です。せっかく苦労して集めて見つけ出した優秀な応募者は、もし出現率が1%だとすれば、エントリー100人分に相当します。この「顔が既に見えている」人を口説き、入社意思決定してもらうことに時間を使うべきです。

「口説き」シフトを行うタイミングの決め方

「人集め」と「口説き」のバランスをどう取るかは、これから頑張ってエントリー数を上げることができたとして、その向上分から出現する内定者を過去の歩留まりから考えた際に、「何人分のインパクト」があるのかどうかで考えます。例えば、出現率が上記のように1%とすれば、エントリー数を500人増やしたとしても、そのインパクトは内定者出現率5名分です。一方、既に「顔が見ている優秀な応募者」が50名いたとして、そこから実際に最終合格⇒内定出し⇒内定受諾という流れにおける歩留まりを10%向上させれば、エントリー数を500名増やすこととほぼ同等の価値があることになります。

こういう比較から、エントリー数をまだ増やす必要があるのか、それとも学生フォローを頑張って、口説きに力を入れる方が最終結果に対して効果的であるのかを検討した上で、「口説きシフト」を行います。具体的には、エントリー数を増加させるために行っているマス向けの説明会などの諸活動の量を少し減らして、その分を見つけ出した「優秀層」のフォローに回したり、現場社員に協力を要請したり、社外のアウトソーサーに、相対的に価値の低い活動である「エントリー数向上系」の業務をアウトソーシングしたりということです。

正しい判断は日々のシミュレーションから

 以上のようなことは、極めて普通なことですので、ここまでお読みいただいて「何を当たり前なことを言っているのか」と思った方も多いと思います。しかし、多くの会社で実際の採用担当者の活動バランスは上記のようになっていません。なぜでしょうか。
 
一つは、新卒採用担当者はピークになると忙しすぎて、事前に立てていた計画がその通りに行っているのかどうかちゃんと数字を出してモニタリングできていないことが多いということが理由です。実数を追うだけなら難しい作業はいらないので、エントリー数などのわかりやすい指標の「成否」はすぐ見えて、そのためすぐ対応したくなるのですが、各選考段階の合格率や応募者の途中辞退率は、最後まで採用活動をやりきってからでないと本当の結果数字が見えません。次の選考のアポを取って待機している人がいるからですが、彼らがその後、仮定の歩留まりで選考が進んだ場合、最終的に内定者が何人になるかというシミュレーションを随時行っていないと、「結局、今、うまくいっているのかどうか」が判断できず、本当は「口説き」に力を入れるべきタイミングでも、結局、「見えている危機」であるエントリー数や説明会参加者数だけに注力してしまうのです。

「振られる恐怖」を乗り越える

 もう一つの理由は心理的なものです。長年多くの採用担当者を育成してきた経験から、彼らの多くが持つ「振られることへの恐怖」が関係しているように思います。
 人は全力でやったことが失敗することを大変恐れます。全力でやったのに失敗するということは自分の能力が低いということを証明してしまうからです。そのため、無意識のうちに「全力でやらないでおこう」とする気持ちが生じます。そうすれば、自分の能力の低さを隠せるからです。このような現象を「セルフ・ハンディキャッピング」と言います。

 優秀な応募者を口説いて、結局辞退をされるという経験は、採用担当者にとっては最も厳しいことの一つで、自社や自分の能力や魅力を否定された気分になります。よく「恋愛で振られるようなもの」と表現されますが、実際に心が痛い気がするものです(ものすごく振られた経験の多い自分もよくわかります)。だから、そこにセルフ・ハンディキャッピングが生じてしまう罠があるのです。振られると嫌だから口説かないということです。

しかし、それでは、ダメです。採用担当者の熱意は、応募者にとって入社意思決定をする大きな要因です。採用担当者は勇気を出して「振られる恐怖」を乗り越え、時期を見て自身の採用活動の時間の割合を「口説き」にシフトしていくことが必要だと思います。

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