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【常見陽平直伝】求職者をファンに!常見陽平が教える中小企業の「愛され採用」(後編)

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2015年、「人事アンテナ」が最初にインタビューさせていただいたのは、評論家・コラムリストでありながら人材コンサルタントとしても活躍する常見陽平さん。

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常見さん自身は、『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)』などの著書で知られ、メディアに登場する機会も多い。

2014年9月に発売された『リクルートという幻想』は、記者会見(新書発表会)を開き、インターネットニュース編集者・中川淳一郎氏との公開討論を行うなど、話題となった。

※ 参考
怨念を超え、「愛と怒り」のリクルート検証本 「出身」常見陽平氏が異例発表会でぶちまけたコト/JCAST会社ウォッチ

採用活動はメディア設計と似ている

――――― 「応募者の絵を描く」という点についてはメディアと似ていますね。(詳細は前編である八方美人な採用はNG!常見陽平が教える中小企業の「愛され採用」を参考)メディアも誰がどうやってどんな読者を連れてくるかが大切なので。

常見:はい、採用も「リクルートさんやマイナビさんに頼めばいいや」では今後難しくなるでしょう。よりマッチする人材と出会うためには、就職情報会社の営業さんの付き合い方を考えることも大切です。
メディア企業全体に言えることですが、同じリクルートさんでもマイナビさんでも、営業する人によって「成果」が違います。やはり就職情報会社の営業は大事なパートナーです。

――――― “元リク“(元リクルート社員)ならではのアドバイスですね。

常見:リクルートさんも、強さの質が変わってきていますね。組織的に効率的に営業していく会社になってきた印象です。


――――― 他に就職情報会社との付き合いで気をつける点はありますか?

常見:そもそも、求人が回復傾向の場合は、就職情報会社にとってはかき入れ時になるわけです。そのため、彼らも営業担当者が足りなくなるので、新卒・中途で大量に採用します。結果として、未熟な営業担当者ばかりがやってきて雑な営業をされてしまうということが起こりがちです。

――――― なるほど、就職情報会社も混乱していると。

常見:会社の規模にもよりますが、小さい会社だったら社長、大手であれば会社の役員や部長クラスを、就職情報会社の営業担当者との、その年度の最初の商談に同席させましょう。就職情報会社の営業担当者に「○○(上司)も同席します」と言えば、向こうも上司を連れてきて、上の役職同士の人間関係を築くことができます。

――――― パートナー企業を人間関係含めて上手く活用していく、ということですね。

常見:そうです。こうすると、就職情報会社にもより深い課題を伝えることができますし、こちらの本気度が伝わります。就職情報会社の営業担当者の上司に、部下の仕事を見てもらう機会が出来たのだとも言えます。営業担当者の動きが良くなることも期待できます。

――――― 例えば、人材会社の営業が若くて、少し頼りないなぁと感じたら会社としてはどういう対応をしたらいいのでしょう?

常見:営業担当者は、自分の部下だと思うべきです。ちゃんと、育てる、と。私がやっている手法としては、毎回“宿題を出す”ことですね。宿題で「すみません、ちょっとこの業界の応募状況などのデータを調べていただけますか?」と営業に言う。そうすると、若い担当者がメキメキ育って、採用を軸により深いパートナー関係が築けます。まあ、就職情報会社の営業担当者ばかりをせめるのはなんですが、もし不満だらけの場合は、担当者の交代をお願いしてみるのも手ですよ。その担当者の上司との接点があれば、こんな大胆なお願いもしやすくなります。もちろん、最後の手段ですけどね。

もっとも、自社内のおける目標設定、期待値調整も必要です。例えば、上司が「MARCH以上3人採れ」などと言い出すことがありますが、この言葉を鵜呑みにしてはいけません。なぜその大学群から3人なのか?「経営幹部候補生を1人採りたいと考えている。だから優秀な人材が欲しい」「会社を変えていける○○のような人材が欲しい」など、採用する理由を明確にしなくてはいけません。

自分たちも面接されていることを意識しよう

――――― 他にも、例えば面接時などで人事が気をつけておきたい点があればおうかがいしたいです。


常見:自分が、実は面接されていることを意識することですね。応募者はいくつか会社の候補がある中で「この会社に飛び込んでいいのか?」と考えています。面接官も見られています。「私たちの会社は応募者に選ばれている」という視点がとても大事です。だから、面接官も面接の練習をしないといけません。

面接官が、応募者の志望度に与える影響は大きいので、私は「面接官もロールプレイングしましょう」「人選をしっかりしましょう」と、企業の人事によくアドバイスします。面接官研修をするたびに「学生からの質問は会社の魅力を伝えるチャンス」と伝えています。学生から「なぜ○○さんはこの会社に入ったのですか?」と聞かれて、「今の会社しか選択肢がなくてしょうがなくて入った」って言われたら、応募者だって「ええ!?」と思うでしょう。いや、さすがに人事部の採用担当者はこんなことを言いませんけれど、現場の営業担当者、企画担当者、エンジニアなどにお願いすると、こんなことを言ってしまう可能性があるわけです。もちろん、それを含めて本音を話すというのも否定はしませんが、ここでいかに自分が入社した理由、取り組んでいる仕事などについて語れるかどうかがポイントです。

――――― そうなると、面接官自身が一番会社に詳しくないといけませんね。

常見:もちろんです。嘘はいけませんが、魅力的に語れるように採用担当者や、面接官を担当する社員も練習をしましょう。学生からよくある質問に対して、答えることは会社の魅力を伝えるチャンスでもあります。これは応募者を口説く、絶好の機会です。

求職者をファンにする

常見:求職者は、たとえ合格にならなくても、逃げられても、会社のファンになってもらいたいですよね。そのためにも、やはり応募者の話を「深く聞く」さらには、その人たちに企業の魅力を劇的に伝えるという姿勢は求められます。小さいIT企業やベンチャーの採用を成功させるコツとしては、時間はかかりますが、応募数がそんなに多くないのであれば全員面接してしまいましょう。

――――― 応募者全員を面接すると?

常見:はい。「○○さんと△△さんだけ呼んで話を聞こう」ではなく、マッチしない人でも、会ってお話をすれば「あの会社面白かったぞ」って発信してくれる可能性はあるわけです。新卒にしろ、中途にしろ、市場がよくわかりますし。

――――― 採用活用はファン作りから、ですね。

常見:あと、応募者と話すことで、人材市場の「相場」も知ることができます。「今この業界、企業から人が動いているんだ」「今、求めるレベルの人材は取りにくい市場なんだな」など、情報収集も可能です。
「あの会社って世間のビジネス誌では評判はいいけれども、実際は人材が消耗品のように使われているんだな」など、応募者から本当の側面を知ることもできます。

――――― なるほど。「あの会社も受けてうちに来てくれたんだ!」という流れも知ることができますね。

面接官を育てよう

――――― 面接官の質は上がってきているのでしょうか?

常見:企業によりますね。よく問題となるのが、採用担当者の異動、退職です。採用力が組織化されていないと、担当者の人事異動や退職によってノウハウが途絶えてしまう。スキルが次の採用担当者へ伝承されていないのはもったいないことです。もちろん、採るターゲットも変わりますから、そのたびに再構築というのも考え方としてはありますけれど。
気をつけたいのは会社が採用活動を中断するときです。新卒採用を2年やめた後、「じゃあ来年からまた再開しよう!」となったとき、ノウハウ、大学、就職情報会社とのリレーションが失われている可能性があると思います。

――――― 採用活動のナレッジは共有して伝承することが大切ですね。

常見:学生に限らず求職者は、毎年少しずつ変化します。企業の人事は、そのことも忘れないでいただきたいですね。例えば「若者の本離れ」と言われていますが、見方を変えると「本を読む必要がない世の中」になってきていますし、大学3年生など就職活動を始める世代は既にスマートフォンやインターネットをかなり活用してきた人材たちです。「オジサン人事」と言っては失礼かもしれませんが、年配人事が学生から学ぶべきことも多いでしょう。

――――― 人事も時代に取り残されない心構えが必要ですね。

ベンチャーやスタートアップにおける採用時の留意点


――――― ベンチャーやスタートアップの採用に必要なことがあれば教えてください。

常見:実は、驚くほど世の中の人は「あなたの会社」に興味を持っていません。もっと言うと、知りません。採用担当者として面接するときは、「うちの会社はこんなところが魅力です」「こういう風に認められています」と熱く語ることはもちろん大切。
まあ、現実をみることは大事です。「うちの会社はまだ知名度がない」「お給料、思ったほど多くない」など、採用上不利な点はいったん認めるべきです。採用活動においても、求職者に伝えないとダマシになってしまいますし。

採用担当者は、企業の魅力を伝える際に情熱的な「赤」冷静な「青」の2色を持ってないといけません。これは、特に中小企業には大切です。両方セットで伝えないと人材が採れません。例えば、「○○業界を変える革新的ITベンチャー」など熱い系のビジョンをアピールしつつ、「独自の技術を持っている」「この分野ではシェア1位」など揺るぎない事実も合わせてアピールしましょう。情熱で採用を乗り切るベンチャー企業さんも多いですが、特に賢い人は情熱だけでは採れません。

――――― 「愛され採用」のためには、情熱だけではなく冷静さも忘れるな、と。

常見:情熱で人が採れる会社であれば、それは間違っているわけではありません。しかし、情熱だけだと本当に例えばクールな人、スマートな人には見下されてしまいます。少し失礼な言い方をすると、「採れていない」ということです。
ITで世界を変える!」ということは、誰でも言えます。情熱だけで働くレベルの人しか採れないですし、限界があります。採用担当者は情熱から一歩距離を置いた、企業の冷静な「青いビジョン」を伝えつつ、かつお互いの夢を確認したり、共感の接点を作ってあげることが大切です。

――――― 勉強になりました。今回は貴重なお話をありがとうございました。

(執筆&編集:サムライト

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