サイボウズ大槻氏

「サイボウズ式」は、働く社員の誇りさえも醸成した。大槻幸夫氏が考える、オウンドメディアと人材戦略の関係(後編)

LINEで送る
Pocket

今や、成功したオウンドメディアの代名詞とも言える「サイボウズ式」。働くママのリアルな日常を題材にした「大丈夫」というワークスタイルムービーも大ヒットし、サイボウズ株式会社が世の中に向けて発信するメッセージは、大きな注目を浴びるようになりました。

その立役者の一人であるのが、「サイボウズ式」初代編集長の大槻幸夫氏。インタビュー後編では、企業ブランディングの向上によってもたらされた様々な効果について語っていただきました。

▼前編はこちら
オウンドメディアは、最高の採用ツールでもある。「サイボウズ」初代編集長・大槻幸夫氏に訊く(前編)

言いたいことを抑えた結果、逆に取材依頼が増えた

サイボウズ大槻氏
—「サイボウズ式」によって飛躍的に企業ブランディングが上がったと思うのですが、やはりプロモーション以外の効果もありましたか?

大槻:外部から取材依頼を多くいただけるようになって、そういう点でも「サイボウズ式」の力を実感しています。うちの部は広報も担当しているんですが、以前はメディアから連絡があって取材対応する…みたいな、受動的なスタイルだけだったのがすごく不満だったんですよ。かと言って、自分から何かを仕掛ける方法というのは、なかなか見つからなかったんですけど。

でも、「サイボウズ式」でああやって記事を上げておくことで、ネタのショーケースが出来上がってきて。そこから「これを取材したい」と言われるようになったんですよね。たとえば、社内恋愛について聞きたいとか、子連れ出社について聞きたいとか。以前、チームワークという言葉を検索したら一番上にうちのページが出てきたから、という理由で「ラジオでチームワークについて話してほしい」と言われたこともありました。

—「サイボウズ式」を模倣してオウンドメディアを始めた企業も多くありましたが、うまくいかずに消えていったものもいくつもあります。その差はどこにあるとお考えですか?

先程もお話しした通り(※前編参照)、サイボウズのような世間的に知名度の低い会社が「新入社員が何十人入りました」とか「社内イベントやりました」とか、そういう企業広報のような情報発信をしても、誰も読まないですよね。僕らはその立ち位置を分かっていたので、あえて自分たちの存在感を極力消して、読み手が興味を持つ内容を載せることに徹したんです。それが今の結果につながっていると思いますね。

世間に会社が評価され、社員に「誇り」が生まれた

サイボウズ大槻氏
—「サイボウズ式」は採用にも好影響を及ぼしたというお話は先程伺いましたが、既存社員の方々にも何か変化はありましたか?

大槻:まず社員の意識改革として、非常に大きな効果がありましたね。2008年頃から、社長が「サイボウズは単なるグループウェアのメーカーではなく、“チームワークを提供する会社”だよ」って言い始めたんですけど、実はこれがなかなか社内に浸透しなくて…。

でも、「サイボウズ式」でチームワークをテーマに扱うようになってから、徐々に変化が現れ始めて。オウンドメディアが社外から注目され、社長の声を書き起こした記事が10万PVを超えて9000いいねがついたりすると、社員も「おっ」となるわけですよ。そういう第三者評価が加わると、「うちっていいことを言っているんだ」って、社長の言葉もすっと入ってくるんですよね。人ってなぜか直接言われると、率直に受け入れられなかったりするんですけど(笑)

—職場内でも、社員のモチベーションや働き方などが変わったりしましたか?

大槻:はい。自社が発信するメッセージや、様々な働き方への取り組みなどを、みんながすごくポジティブに捉えるようになったと感じています。最近は営業現場で「“チームワークのサイボウズ”として、グループウェアの提案ってどうあるべきだろう」なんていう勉強会を開いたりする動きも出てきて。この変化には私も驚きました。

それから、社員たちの中にはサイボウズで働くことの「誇り」も生まれたようです。特に、「大丈夫」のムービーの大きな反響があってからは、それがますます顕著になりました。女性社員がママ友から「サイボウズっていい会社ね」と褒められたり、年末年始のテレビCMを見た地元の友達や家族から「いい会社に入ったね」って言われたり。そういうことがモチベーションにつながって、「ここで働いていてよかった」と感じる社員が増えているんです。

オウンドメディアは、採用の確度を向上させた

サイボウズ大槻氏
—最後に採用の話に戻りますが、「興味を持ってもらう人をふやす」ために、オウンドメディアの活用で工夫されていることがあれば教えてください。

大槻:「サイボウズ式」では、単に露出を増やすことが目的ではなく、サイボウズという会社をちゃんと理解してもらった上でのエントリーを増やす、ということに貢献できるのかなと考えています。さらに今後は、就活を本格的にスタートさせる頃よりも手前の、インターンシップの応募を増やしたいなと思っています。実際にインターンシップとしてサイボウズで働いてもらって、中も全部知ってもらった上で、それでも「受けたい」と思う人が出てきてくれると嬉しいですね。

—そういう人こそ、御社が大事にしている「共感度」が高い人ということになりますもんね。

大槻:まさにそうです。それに、インターンというお見合い期間をお互いに持つことで、「スキルはあるだけど、共感度は低い」という理由で選考の途中で落ちてしまう人の取りこぼしを減らせるかなとも思っています。どうしても選考では共感度を重視して判断してしまいがちなんですが、中には「一緒に働く中で、だんだん共感度が高まってくる」という人もきっといるはずだと思っているので。

そんな風に学生さんたちにサイボウズを知ってもらいながら、逆に僕らも相手を知って、採用という成果につなげていきたいですね。そしてその際に、僕らが出会う学生さんたちとのミスマッチをなくしていく役割も、オウンドメディアにはあるのかなと思っています。「サイボウズ式」を見ていれば、お金儲けしたいとか、とにかく自分が成長したいとか、そういう人は来ないので。本当に、チームワークを広げたいとか、そこへの共感度の高い人が圧倒的に多いんですよね。

—「サイボウズ式」は単に応募者の間口を広げるのではなく、あえて狭くするためのツールでもあるんですね。

大槻:結局、採用を「狭き門」にしたことが、今のサイボウズの良い文化を生み出していると思うんですよ。大量採用をしてどんどん離脱していくってモデルじゃなくて、人を厳選して採用していくスタイルの方がきっと僕らには合っていて。そのための接点やコミュニケーションを増やす上での1つの大きな武器が、オウンドメディアなのかなと思っています。

—単なるプロモーション戦略だけでなく、社内外の様々な方々とコミュニケーションを深めるツールとしても、オウンドメディアを有効に活用されているんですね。本日は貴重なお話、どうもありがとうございました!

(編集・執筆:サムライト

LINEで送る
Pocket