サイボウズ大槻氏

オウンドメディアは、最高の採用ツールでもある。「サイボウズ式」初代編集長・大槻幸夫氏に訊く(前編)

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グループウェアで国内シェアNO.1を誇る、サイボウズ株式会社。2012年にプロモーション戦略として始めたオウンドメディア「サイボウズ式」は、ソーシャルを中心に影響力を拡大させています。また、2014年12月に公開された、働くママの日常や葛藤を描いたワークスタイルムービー「大丈夫」は世の中に大きな反響を呼び、サイボウズの名は飛躍的に広まりました。

今回のインタビュイーは、これらのプロモーションを成功させた「サイボウズ式」の初代編集長である、大槻幸夫氏。人事アンテナが初めて、【サイボウズ式×採用】という切り口でお話を伺ってきました。

実は“リベンジ”として臨んだ「サイボウズ式」

サイボウズ大槻氏
—今はサイボウズと言えば、「学生が働きたい企業50社」などに選ばれ、働きやすい会社として注目されていますよね。しかし、大槻さんが転職された2005年は、離職率が28%まで上昇していた頃でした。その当時、なぜここに転職しようと思ったのですか?

大槻:確かに当時は毎週のように送別会があったので、「よく人がいなくなる会社だな」とは思っていました(笑)でも、そんなに悪いイメージはありませんでしたね。「若くて活気があって、面白そうな会社」というポジティブな気持ちでした。もともとサイボウズの製品も使っていてファンだったということもあり、ここで働けることを楽しみに思っていました。

—なるほど。そして2012年に、「サイボウズ式」の初代編集長に就任されたんですよね。その経緯について教えていただけますか?

大槻:その頃にはもうグループウェアは成熟市場で、普通に製品広告してもなかなか売れない時代になってきていました。そんな中、当時はソーシャルメディアも広まってきた頃で、プロモーション担当の自分に「新しいコミュニケーション手法を考えてみてよ」という、ざっくりとしたオーダーが下りてきたんです。

実は既に1度、似たようなことにチャレンジしていたんですけどね。2006年ぐらいに企業ブログが流行った時期があって、そのときに製品カットじゃなくて、お客さんの課題カットのコンテンツをブログに載せていて。でも、当時は今みたいなソーシャルメディアはなかったので拡散もせず、認知度も上がらず…。「いつかまたチャレンジしよう」と言って閉じたんです。だから、僕の中で「サイボウズ式」はある意味リベンジなんですよ。

ただ自社情報を発信しても、誰も見てくれない

サイボウズ大槻氏
—それでまた新たにメディアを立ち上げることになったんですね。でも、次はなぜあえて自社の情報を中心に伝えないメディアにしようと思ったんですか?

大槻:中身が製品の宣伝じゃないというのは、これも一種のプロモーション戦略なんです。この説明をするとき、僕はいつも成熟市場を「選挙」に例えて話すんですけど。僕らって政治のプロじゃないのに、選挙では誰か1人に投票するじゃないですか。じゃあどうやってその1人を決めているかと言うと、別に純粋に政策だけで選ぶわけじゃないですよね。きっとみんな、今まで生きてきた中で「この人は信頼できる」と判断する軸があって、その人の話し方、表情、生き方などから総合的に見て決めていると思うんですよ。

—そういう風に選ぶところが、グループウェアの成熟市場に似てるなと?

大槻:はい。お客さんの購入の決め手は、データベース機能や処理速度といったスペックじゃないんですよ。そこから得られる価値や、それを提供する「サイボウズってどんな会社?」というところから、入ってきてくれるので。

だから、まずサイボウズがいい会社だと知られていないと、お客さんが製品を決める際に検討の土台にも上がれない。でも、当時のサイボウズはまだ、情報システム部やIT業界の人にしか知られていないベンチャー企業でした。そんな僕らが一方的に伝えたい情報だけを発信しても、きっと見てもらえないだろうと。そこで、世の中が関心を持っていることを伝えるメディアをつくって、その記事が流通する中に「サイボウズってこんなことをやってる会社なんだ」というのがもっと多くの人の目に入ればいいかなと思ったんです。

意外にも、1年目にプロモーション効果が出た

サイボウズ大槻氏
大槻:トレンドのネタを扱いつつ、その合間にサイボウズの社長も登場したりして、中の人を知ってもらうようなコミュニケーションを取っていく。それをやることで、お客さんがグループウェアを選ぶときに「サイボウズ、知ってる!」というスタート地点に立てるのかなと。

—なるほど。でも、プロモーションとして考えると、なかなか売上には直結しにくそうですが…。

大槻:僕らもそう思っていて、「まずは3年ぐらいやってみよう」って感じでいました。でも意外なことに、開始1年目でもう売上に貢献しまして。サイボウズのクラウドを購入してくれたお客さんに「どこで知りましたか?」というアンケートをとったら、4.4%の人が「サイボウズ式」と答えてくれたんです。

「たったそれだけ?」って思う方もいるでしょうが、法人ビジネスでの4.4%って実は大きくて。クラウドは単価は低いんですが、長期間契約していただけるものなので、それを考えるとかなりの売上貢献になると考えています。

「サイボウズ式」から見えた、採用の黄金パターン

サイボウズ大槻氏
—「サイボウズ式」は開始1年目でもう企業ブランディングの向上に一役買っていたということですね。その影響は、採用活動にも表れてきましたか?

大槻:まず、「サイボウズ式」を見て、それをきっかけに来てくれる学生さんが明らかに増えましたね。最近はメディア志望の学生とかも来るんですよ。うち、メーカーなんですけど(笑)まあそれだけ「サイボウズ式」の知名度が上がってきているという証拠だとは思っています。今年は22人の新卒が入りましたが、その内「サイボウズ式」にも興味を持ってくれていた人が3人いました。つまり、全体の14%の採用に「サイボウズ式」が貢献できたことになります。

—すごいコンバージョンですね。でも、来年はその数がもっと増えそうな気がします。

大槻:そうですね。2016年採用では、現時点で3000人ぐらいのエントリーがあって、アンケートではそのうち37人が「サイボウズ式を知っていた」と答えています。全体から見ると約2%と数は少ないですが、そもそもうちの新卒は合格率が1%とかなり厳しいんですよね。それを考えると、来年度も優秀なコンバージョンが期待できると思っています。あと、今年の新卒には「サイボウズ式」をきっかけにインターンを始めて、そのまま入社してくれた子が1人いるんですよ。

—それって、新卒採用における一番の黄金パターンですよね!入社前からしっかりカルチャーマッチしている分、より会社にコミットして活躍してくれそうですね。

大槻:そうなんです。でも、最初は知らなくても選考の過程で「サイボウズ式」を見て勉強する子もいるでしょうから、そういう意味でもやる価値は大きいと思っています。当社の採用基準は「理想への共感度」が重要なポイントなんですが、「サイボウズ式」を見ればそれが上がってくるはずなので。実際、最初は単なる興味本位で受けに来た子が、選考が進むにつれてどんどんサイボウズへの会社愛が強くなった、なんて事例も出てきているんですよ。

(つづく)

※後編では、「サイボウズ式」が既存社員に与えた影響など、企業ブランディングによって得られた様々な効果について語っていただく予定です。お楽しみに!

(編集・執筆:サムライト

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