LGBTスタッフを受け入れる多様性を実現!「NPO法人フローレンス」宮崎真理子氏が目指す組織づくり(前編)

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現在、木曜日の夜9時から放送されているドラマ『37.5℃の涙』のモデルにもなっている、病児保育事業を展開する「NPO法人フローレンス」。

病児保育や長時間労働など、社会に存在する様々な課題に対して、事業を通じて解決へと歩みを進めていくことがフローレンスの存在意義といえます。

2012年12月には「認定NPO法人」を取得するなど、これまでにも『働き方革命』と称して、ワーク・ライフ・バランスの実現を目的に、組織内外問わず様々な活動を行ってきました。

今回のインタビューでは、そんな新たな価値を提供し続ける「NPO法人フローレンス」において、事務局長として指揮をとる宮崎真理子さんにお話を伺いました。イノベーションを起こす組織に不可欠な『多様性』を受け入れるためには、一体何が必要なのでしょうか?

多様性を尊重した就業規則の変更を実施

—フローレンスと言えば、4月に「LGBT(※)」のスタッフがいることを明かし、多様性に対応した就業規則の改定を実施、メディアからの注目度も高まりました。その規則の変更に至るまでの経緯を教えて頂けますか?

宮崎:まずフローレンスでは、これまでも多様性を尊重した組織づくりを行ってきました。そのため、スタッフがLGBTと公言してくれたことに対しては、皆大歓迎でした。

しかし、一緒に働いていく上で、どういう点に配慮したら良いか分からない点も多く、そこを検証しようと思ったのが就業規則改定の第一歩目です。

その後、本人からどこを直せば働きやすくなるかを聞いていくうちに、私自身がスタッフの働き方に関して何も分かっていなかったのだと気付かされました。そこで、具体的に改善してほしい部分を直接教えてもらうようにしました。

(※)「LGBT」は、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー/トランスセクシュアル(Transgender/Transsexual)の4つ(*1)の頭文字から成る、いわゆる性的マイノリティといわれる人たちのことを指し、年月を追う毎に関心が高まりつつあるワードです。

—その具体的な改善ポイントとは?

宮崎:「履歴書の性別欄の記載を変更してほしい」という点と、「慶弔休暇を同性婚であっても認めてほしい」という2点でした。そのため、まずは履歴書の性別欄が「男・女」だけだったところに「その他 ※自認の性をお書きください」という一文を追加しました。

そして慶弔休暇では、事実婚・同性婚の配偶者を定義しました。「結婚した場合には、本人の結婚で5日間の休みを認める」ということを定めたんです。結婚関係であることを相互に認めることだけが条件なので、結婚に関しての証明書は一切必要ないという部分がポイントです。

就業規則の変更に伴い、性別欄の記載が変更された『履歴書フォーマット』

就業規則の変更に伴い、性別欄の記載が変更された『履歴書フォーマット』

証明書を不要とした、「LGBT」の家族・友人へのサポート

—なるほど。そういった履歴書や制度上の変更手続きというのは、具体的にどの役職の方が担当されたんですか?

宮崎:最初に、問題定義や変更点を私も含めてディスカッションし、具体的な改善案が決まったところで人事部のスタッフに作ってもらいました。その中で一番苦労したのが、「結婚」と扱うために、結婚したことをどのように証明するかが議論になりました。

でも、慶弔休暇取得のために自分の結婚について仲間に嘘をつく人はいないと思ったんです。だったらそこを詮索するのにエネルギーを費やすのは止めようと。スタッフにも結婚の証明について質問したところ、「相互に認めていれば問題ない」ということで意見が一致しましたので、証明書は不要にしたんです。

—他のスタッフの方の反応はどうでしたか?

宮崎:実際に社内でLGBTを公言しているスタッフは1名ですが、友人や家族にLGBTの方がいるというスタッフは複数名いるんですね。なので、この就業規則改定についてはすごく喜んでくれました。こういう“ムーブメント”が起きることによって、働きやすくなると絶賛してくれました。

2種類の「従業員満足度調査」で人事政策を改善

—そういった日々の改善の積み重ねにより、「Great Place To Work(R)(働きがいのある会社ランキング)」でも4年連続受賞されたということですね。

宮崎:そうなんです。でもあれ、組織規模(人数)ごとにカテゴリーが振り分けられているんですね。フローレンスはスタッフの数が右肩上がりに伸びていて、いつの間にか300人以上のカテゴリーになりました。そのため、今ではあのGoogleさんと勝負させて頂く形になっています(笑)

—では、この「Great Place To Work(R)(働きがいのある会社ランキング)」の調査を使うことでスタッフの満足度調査をされているということですか?

宮崎:あとは、「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」という指標も利用しています。年に2回「あなたはこの会社を友人に推奨したいと思いますか?」という質問に基づいたアンケートを実施し、その結果として表れる数値を集計しています。

—それを元に生まれた改善策や、効果のあった制度などはありましたか?

宮崎:いくつかあります。そもそもフローレンスは、NPOとしてまだまだスタートしたばかりで、処遇の面ではあまり贅沢なことは言えなかったんです。なので、まずは地道に働き方の改善を行っていった結果、それに応じるようにしてNPSのスコアも良くなっていきました。

あと、「ひとり親手当」という制度を作りました。そういった社会的に立場の弱いマイノリティの方も大事な仲間ですから。その大切なスタッフのために、仕事をしていく上で働きやすい環境を作ることを中心に改善しています。

経営者に認めてもらうには、課題に対する「本気」と、貢献度を表す具体的な「数字」が必要

—スタッフの方を思う気持ちが伝わってきますね。ですが一方で、多様性を持つ組織を築いていくために、上司や経営者の理解をなかなか得られずに苦労されている担当者も多いかと思います。そういった部分を納得してもらうためには、何が必要だとお考えですか?

宮崎:経営者を説得するには、具体的な数字で述べなきゃいけないと思います。例えば、従業員満足度が高まるとか、採用コストが減るとか、離職率が下がるとか、何でもいいのできちんとした数字を提示することが必要だと思います。

あとは、多様性を認めてくれる組織だとスタッフに伝え、安心感を持ってもらうことですね。安心感があって初めて、継続して活躍しようという意欲が湧いてくるのだと思います。実際に、「本当にいい組織だと思っています。私も長くここで働きたいです。」とあるスタッフに言われ、本当に嬉しかったですね。

また、多様性を受け入れる場合、各人への個別のケアが必要になってくると思うんです。その場合、人事担当者は業務とケアを両立してしまうと仕事が増え過ぎてしまうため、優先順位をつけて進めていくことが大事になってきます。そういった、細かい意思決定を年度ごとのテーマにして取り組んでいますね。

(つづく)

—後編では、「フローレンス」の社内広報の活動内容や、採用方針について語って頂きます。ご期待ください!

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