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外資戦略系コンサルティングファームや総合広告代理店、大手商社等、超人気企業の内定を辞退して新卒学生が入社するデータテクノロジースタートアップ「フロムスクラッチ」の採用力

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「採用は戦いです。それも“全社をあげた”戦いです。」

そう語るのは、2015年に、シリコンバレーに本拠地を構えるベンチャーキャピタルや、電通デジタルホールディングスらから、総額13億円もの資金調達、ビッグデータ×人工知能を主軸に事業を展開するデータテクノロジーカンパニー「フロムスクラッチ」組織・人事ユニットの峰岡さん。フロムスクラッチは、次世代型マーケティングプラットフォーム「B→Dash」というプロダクトで急成長中です。

フロムスクラッチに入社するメンバーは、中途ではBCGやベイン・アンド・カンパニー等、外資戦略系コンサルティングファームからの転職者、新卒では5大商社や外資戦略系コンサルティングファーム、外資系金融機関から内定をもらいながらも、その道を辞退して来られる方々です。社員数60名程度のスタートアップでありながらその採用力は突出しています。
今回は、フロムスクラッチがなぜそのような圧倒的な採用力を持っているのかに迫ります。

「採用は全社をあげた戦い」人事だけが採用に力を入れても成功しない

——フロムスクラッチでは、責任者として採用にフルコミットする役員を配置しているとお伺いしたのですが、どうしてそこまで採用に力を入れられるのでしょうか?スタートアップの場合、利益に直結するサービス側にエース級の人材を配置することが多いと思うのですが。

峰岡さん:「採用に力を入れる」というレベル感では無いかもしれないですね。会社設立時から、新卒採用を「経営の最重要事項」と位置づけています。通常のスタートアップは優秀な人材をプロフィット部門から外せないですが、そこを経営の意思決定でいかにHRにリソース転換できるかが、採用力に直結します。
では、なぜそのような意思決定をするのかですが、それは「現代において、企業の競争優位性はビジネスモデルでもなく、サービスでもなく、組織がもたらすものである」という考え方からです。テクノロジーが発展し、ビジネスモデルやサービスは容易に模倣され、そのライフサイクルは10年、20年前とは比較にならないほど短くなっています。
そして優位性を担保するための組織づくりにおいて、なぜ新卒採用が重要か、その理由は下記3つです。
一つ目は、「身の丈に合わない人材の採用が可能である」ということ。

スタートアップは、社員数が少なく、一人あたりの業務領域やメインミッション以外にもカバーする範囲が大きく、優秀な人材が一人増えることのインパクトは規模の大きな企業と比較し、遥かに大きいです。しかし、採用マーケットにおけるブランド認知がありません。そんな状況下でハイレベルなビジネスマインドを持ち、スキルフルな中途転職者を採用することの難易度はかなり高い。
但し、新卒採用は中途採用と異なり、会社の投資次第で、「中途採用では出会えない様な人材」に
出会えます。その意味で、新卒採用には大きなメリットがあるのです。

ただ、スタートアップや中小規模の企業では、新卒は教育にコストが掛かって、採用コストの回収に2−3年かかると敬遠する企業も多いと思います。しかし、優秀な学生さえ採用できればそんなことはありません。もちろんビジネスモデルにもよりますが、優秀な人間であれば入社数か月で大きな売上を出すケースも、ままありますから、採用コストは十分にペイすると思います。

二つ目は、「カルチャーは新卒入社者がつくる」です。

組織における共通の考え方・価値観であるカルチャーが統一されておらず、不純な因子が多く含まれてしまえば、組織としてのコミュニケーションコストは増大し、凝集性やそれに伴う機動力、つまり「環境変化への対応力」の低下を引き起こします。新卒入社者はまだ会社組織に入ったことが無いという意味で“ホワイトキャンバス”だと言えますが、カルチャーを受け入れる素地があれば、吸収し、発信して組織に還元するという循環を起こしてくれるのが新卒入社者です。変化の速いこの時代において、組織に凝集性をもたらす源泉が新卒採用だと考えています。

三つ目は、「組織の活性化」です。

リクルート創業者の江副氏の「組織を活性化する施策は3つある。『人事異動』『社内イベント』、そして『新卒採用』の3つだ」という話は有名です。現場社員が日々の業務に対して視野狭窄になりがちな中で、学生に「自社のミッション・ビジョン」「自らの仕事の意義」「入社理由」等を語ることによって、企業のミッション・ビジョンが自身に浸透し、モチベーションが向上するなど、副次効果は大きいと感じます。
以上の理由から、フロムスクラッチ経営陣の新卒採用へのコミットメントはかなり強く、採用活動全体のコミュニケーション戦略や、イベントコンセプト設計にまで関わり、新卒採用の重要性を全社へ伝達し、組織全体を巻き込んでいきます。

——それはすごいですね。60名を越える規模になっても、新卒採用にしっかり経営者が関わっていることからも、採用の優先度の高さが伺えます。社員を採用に巻き込むことに苦戦している会社もあると思うのですが、どうやって多くの社員を巻き込んでいるのでしょうか?

峰岡さん:一番のポイントは、全社に対して日頃から採用の重要性を、経営者自らが伝達していることです。経営者が自ら動き、メッセージを発することで、社内業務における優先順位が変わります。
社員の皆さんに面接官などをお願いした場合、採用の重要性を前提として理解してもらえているか否かで、コミュニケーションコストが大きく異なってきます。
これは採用を主導する立場からすると非常に有難いことですね。また、そもそもなぜ全社を巻き込まなければならないかというと、優秀な人材に入社動機を形成する為に、組織全体の“チームワーク”と“機動力”が必要になるからです。

自社の魅力を候補者に対してfitした形で伝える為には、採用のフェーズや候補者の志向に合せて複数の社員が候補者の前に出て行く必要があります。
そのため、出来るだけ多くの社員を巻き込むことが優秀な人材を獲得する為には必須と言えます。当社の場合、今実施中の18新卒では全社員数の半数以上が何らかの形で採用に関与しています。

また、学生さんの前に出るにあたり、候補者に対して話す内容や質、一貫性を担保するために、事前のすり合わせやコミュニケーションが必要になります。現場の人間からしてみると通常業務とのバランスを取りながら、採用に関わってもらうのはそれなりの負荷になります。ですので、採用担当としては、この環境には感謝しないとならないと思いますし、また、それだけのコストを投下しているということなので、繰り返しになりますが、社員一丸となって臨む「負けられない戦い」だと思っています。

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新卒採用を2つのフェーズに分けて、戦略的に取り組む学生コミュニケーション

——「GROw」「AxEL」などの短期インターンシップが学生の中で知名度が高まっていると思いますが、新卒採用での勝ちパターンなどはあるのでしょうか?

峰岡さん:
「勝ちパターン」等というものはありません(笑)
学生の皆さんに対して、“適切な情報を適切なタイミングで伝えている”だけに過ぎません。弊社のイベントに参加してくれた学生さんからは、どのイベントにおいても変わらず「本質的なことを学べた」という声をよく頂きます。

フロムスクラッチの新卒採用では、学生の皆さんのステータスによって採用活動を大きく2つのフェーズに区切り、それぞれのフェーズにおいて適切な情報発信を心がけます。

一つ目のフェーズは、就職活動がまだ本格化していない、夏季~年内の時期が該当します。(勿論、学生さんによって就職活動開始に差はあります)。
このフェーズではフロムスクラッチの話は一切しません。

自社のことに触れないのは、この時期の学生さんにとって、フロムスクラッチの話なんかよりも重要かつ本質的なことを伝えたいからです。今時代がどう動き、世の中が、そして産業がどう変化し、その中でビジネスパーソンに求められることは何か。そこを知らずしてキャリアを考えるのは、非本質的です

正確な時代の捉え方をしてもらった上で、フロムスクラッチに興味が湧けば選考に来てもらえればそれでいいんです。

ですからこの時期には、自社の情報を押し付けないように、学生の皆さんの前にでる社員や内定者には注意を促します。
フロムスクラッチのことに興味を持ち、自分で情報を収集したり、こちらの話に耳を傾けてもらえる状態になってから2つ目のフェーズに移るのです。

2つ目のフェーズでは秋の「AxEL」などのインターンシップ・本選考を経て、学生に自社の情報をインプットしてもらいます。情報を提供するスタンスは、あくまで「適切な情報を伝える」です。勿論、「負けられない戦争」ではあるので、どうしたら自社のことが魅力的に伝わるかは徹底的に考えますが、入社後のミスマッチが双方にとって最大の不幸ですから、弊社を志望してくれる学生に対しては入社後に求めるハードルを脚色なく、嘘偽りなく伝えます。
「万人に合う会社」である必要は全く無いと考えており、大事なのは、自社の“脚色無きハードル”と学生の“コミットメント”をすり合わせることです。

自社の情報に脚色や嘘があると入社後のミスマッチにつながります。人事がやってしまいがちなのが、優秀な学生に「是非うちの会社に入社してほしい!」と言ってしまうことです。これでは学生のコミットメントが醸成されず、どこかに“逃げ”の余地が生まれ、パフォーマンスがでなくなってしまいます。ですから、例えば「うちに入ったら成長出来るよ」といった内容は絶対に言いません。
「成長する人間はどこにいても成長する。他人より急角度で成長しようと思って仕事取りに来る覚悟ないならうちだと振り落とされる。」という温度感でコミュニケーションをとります。それ位の覚悟を持って入ってきた人間がパフォーマンスを出すと考えているからです。

【後記】
−−採用力が高い企業には、やはり秘密がありました。
経営陣が採用に強い熱意があり、役員から現場社員をも巻き込む体制であること。採用のためのコミュニケーション戦略と戦術が緻密に考え、実戦されていること。これが大手の就職人気企業の内定を辞退して知名度や規模では勝てないスタートアップ企業に、入社意思決定を行う秘訣です。
全てを実践することは難しくても、エッセンスを取り入れることで、採用力を強化することは出来るかもしれません。

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