「就活後ろ倒し」の衝撃〜2016年度から新卒採用はこう変わる〜

就活「後ろ倒し」の衝撃〜2016年度から新卒採用はこう変わる〜

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はじめに

2016年卒の学生から、新卒採用の在り方がガラリと変わります。最初の対象となるのは、今年4月から大学4年生になる学生たち。毎年3年生の12月に解禁となっていた企業の採用広報は翌年3月からに、そして採用選考の開始時期は4年生の4月から8月へと後ろ倒しになります。

一方、正式内定の時期は現行と同じ10月の見込みです。そのため、単純に考えると就職・採用活動の時期が大幅に短縮されることになります。

この「就活2016年問題」に警鐘を鳴らすのが、元リクルート人事部ゼネラルマネージャーの曽和利光氏です。今回は、彼の著書『就活「後ろ倒し」の衝撃』から、短縮される就職・採用活動が企業と学生にどんな影響を与えるかを紹介しましょう。

就活後ろ倒しで、何がどう変わる?

スケジュール

企業も学生も、時間が足りなくなる

2016年度採用で、企業が10月1日の内定式までに予定通りの採用人数を確保しようと思うと、人事はかなり焦ることになるでしょう。今まで6ヶ月間(4〜9月)かけて行なっていた採用活動を、わずか2ヶ月間(8〜9月)で終えなくてはならないからです。

その2ヶ月の間に、企業は「母集団形成会社説明会エントリーシート筆記試験による一次選考→数回に及ぶ面接グループワーク内定内定承諾」までのフローを完了させなくてはなりません。そうすると、学生側の就職活動も自ずと時間に追われるハードスケジュールとなります。つまり、企業も学生も、これまでと比べて圧倒的に考える時間が足りなくなるはずなのです。

水面下で行われる採用活動が増える

新卒採用を経験したことのある人事なら、たった2ヶ月間で採用活動が1から10まで終えられると楽観視する人は、まずいないはず。そこで筆者は、多くの企業が就活後ろ倒しのルールを順守しているように見せかけ、水面下で学生との接触を進めるだろうと予測しています。実際、大手人材サービス会社のアンケート調査によると、解禁日の前に面接を始めると答えた企業は全体の50%を超えたそうです。

ちなみに、水面下で行われる採用活動として具体的に考えられる手段は、リクルーターインターンシップの2つ。これらを活用して多くの企業が早くから手を打つことになれば、表向きの就活期間は短期化されたように見えても、実際は学生が就活に費やす時間も今までより長期化する恐れがあるといいます。

インターンシップが採用選考の場になる

今回の就活後ろ倒しを受けて、既に多くの企業が力を入れ始めているインターンシップ。本来の目的は学生の職業体験(企業にとっては社会貢献)ですが、今後は水面下で採用活動の一部として活用する企業が激増することが予測されます。

なぜならインターンシップには、早期に優秀な学生に唾をつけられる堂々と学校を絞ったクローズドな募集ができる、といった大きなメリットがあるからです。

就活後ろ倒しが学生に与える影響

就活生

得をするのは上位5%未満のエリート層だけ

リクルーターやインターンシップを行う企業が増えることで、大学間・学生間の格差が出てくることが懸念されます。リクルーターの社員は、基本的に自分の大学の後輩にしか声をかけない上、インターンシップも上位の大学を選んで募集する企業が増える可能性が高いからです。

したがって、得をするのは上位5%にも満たないエリート層(上位校)の学生だけになると筆者は見ています。

「普通の学生層」が一番厳しい

リクルーターとインターンシップの強化により、企業の採用担当がアプローチする層は今まで以上に上位校の学生に絞られてくる可能性が高くなります。それに伴い、中下位校に通ういわゆる普通の学生層は、採用の告知をしてもらえる機会が減るでしょう。

学校のブランドを持たない学生は、同じ戦いの舞台に立てないという大きなハンデを背負って就活に臨まなくてはならず、最も厳しい状況に立たされることになるのです。

就活後ろ倒しが企業に与える影響

頭を抱える採用担当

中堅・中小・地方企業が割を食う

就活後ろ倒しによる影響を受けないのは、採用ブランド力の強い超人気企業だけだと筆者は言います。それ以外の企業、特に中堅・中小・地方企業が大ダメージを受けるとのこと。学生人気の高い企業がリクルーターやインターンシップに注力すれば、同じようにアプローチしても学生に振り向いてもらえない、というわけですね。

採用ブランド力の弱い企業は、「ブルーオーシャン戦略」が必要

人気で劣る企業は、これまでの採用方針を見直し、ターゲットの学生を変更することも検討する必要性が出てきます。ライバル企業がひしめく人気市場(レッドオーシャン)ではなく、他社があまり目をつけない層の学生からキラリと光る人材を探すブルーオーシャン戦略が成功のカギになるかもしれません。

たとえば、地方大生、女子学生、高卒・高専・専門学校卒、文学部や教育学部などのリベラルアーツ系学部など。確たる理由がないのに大手に避けられている層が、実は採用市場として最も熱いのではないかと筆者は予測しています。

おわりに

人事と学生
Photo by Sebastiaan ter Burg

政府の「学生に学業を優先させる」という目的意識とは裏腹に、就活後ろ倒しによって水面下で就活の開始時期は早まり、企業と学生の双方にとって大きなダメージを与えることが予想されます。

しかし、筆者は本書で単にそれを嘆いているだけではありません。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という孫子の言葉にもあるように、企業と学生がお互いに相手の考えや動きを熟知した上で、自分たちの戦略を練ってほしいと考えているのです。

就活後ろ倒しが決まってしまった以上、今更その是非を問うても仕方ありません。それよりも、今何が起こっていて、それにどう対処するかを考えることが重要になってくるのではないでしょうか。

(編集・執筆:サムライト


書籍:『就活「後ろ倒し」の衝撃』
著者:曽和利光
発売日:2014年9月25日
出版:東洋経済新報社
就活「後ろ倒し」の衝撃

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